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【個人開発】影だけで文字を描くフォント「ShadowCast」を作りました
個人開発アプリ
はじめに — 影だけで文字を描くということ
みなさんは「影文字」をご存知ですか? 影文字は度々SNSなどで話題になるフォントスタイルで、多くのユーザーが手書きで書いて楽しんでいるものです。私もそれを以前から知っていて、影文字が好きでたまに手書きで書いていました。
字は完全な形を失いながらも、不思議と読める。むしろ、光と影の境界線だけで構成された文字には、独特の美しさがありました。
「これをフォントにできたら面白いんじゃないか」— そう思って生まれたのが「ShadowCast」です。手書きの影文字をデジタルフォントとして再現し、さらに8方向の光源すべてに対応させました。
ShadowCastとは
ShadowCastは、文字の影側の輪郭だけを抽出して描画する、全く新しいコンセプトのフォントです。
ShadowCast — What if you could see text as shadows cast by light?
光の方向を指定すると、その光に対して影になる側の輪郭だけで文字を描きます。8つの光源方向に対応。CJK(漢字・ひらがな・カタカナ)、ラテン文字など44,776文字を収録。SIL Open Font Licenseで無料・商用利用OKです。
通常のフォントは文字の輪郭を完全に描きますが、ShadowCastは違います。光が当たる方向を決め、その反対側 — 影になる側の輪郭だけを残す。こうすることで、文字は半分だけの線で構成され、光と影のコントラストが生まれます。
たとえば「永」という文字。左上から光が当たると、右下側の輪郭だけが残ります。画数の多い漢字でも、影の輪郭だけで驚くほど文字として認識できる。人間の脳が持つパターン認識能力を利用した、知覚のデザインでもあります。
8つの光の方向
ShadowCastは8つの光源方向に対応しています。それぞれの方向で、文字の見え方がまったく異なります。光の角度を変えるだけで、同じ文字が全く別の表情を見せる — それがShadowCastの面白さです。
TopLeft(左上)
左上から光が差し込み、右下の輪郭が影として浮かび上がります。もっとも自然な光源方向。文字のシルエットが直感的に読み取れます。
Top(上)
真上からの光。文字の下半分の輪郭が浮かぶ方向です。横画の下辺が強調され、安定感のある印象になります。
TopRight(右上)
右上からの光。左下の輪郭が影になります。TopLeftとは鏡像のような関係で、新鮮な印象を与えます。
Left(左)
真横からの光。文字の右側の輪郭だけが残ります。縦画の右辺が強調され、シャープな印象になります。
Right(右)
右からの光。文字の左側の輪郭が影になります。Leftの対になる方向で、全く異なる文字の表情が現れます。
BottomLeft(左下)
左下からの光。右上の輪郭が浮かびます。通常とは逆方向の光で、ドラマチックな雰囲気を演出します。
Bottom(下)
真下からの光。文字の上半分の輪郭が影として残ります。舞台照明のようなアンダーライティングの効果。
BottomRight(右下)
右下からの光。左上の輪郭が影になります。8方向の中でも特にユニークな見え方をする方向です。
8方向すべてを試せるWebデモを用意しています。光の方向を切り替えながら、自分の名前や好きな言葉がどう見えるか、ぜひ試してみてください。
対応文字と収録数
ShadowCastは「デザイン用の一部だけ使えるフォント」ではありません。実用に耐える圧倒的な文字数を収録しています。
1方向あたり44,776文字。これが8方向分あるので、フォントファイル全体では膨大な数のグリフを処理しています。日常的に使う日本語の文章は、ほぼすべてShadowCastで表示できます。
配布形式
TTF形式とWOFF2形式の両方を用意しています。デスクトップで使う場合はTTF、Webフォントとして使う場合はWOFF2をお選びください。
インストール方法
ShadowCastは主要なすべてのプラットフォームで利用できます。お使いの環境に合わせてインストールしてください。
デスクトップ(Mac / Windows / Linux)
-
フォントファイルをダウンロード
ShadowCast公式サイトからTTFファイルをダウンロードします。使いたい光の方向のファイルを選んでください。
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フォントをインストール
Mac: TTFファイルをダブルクリック → 「フォントをインストール」。Windows: TTFファイルを右クリック → 「インストール」。Linux: ~/.local/share/fonts/ にコピー。
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アプリで選択して使う
お使いのデザインツールやテキストエディタのフォント一覧から「ShadowCast」を選択します。方向名(TopLeft, Rightなど)がフォント名に含まれています。
モバイル(iOS / Android)
Webフォントとして使う
WOFF2形式のファイルをダウンロードして、CSSの@font-faceで読み込めば、Webサイトでも使えます。デザインやアート作品のWebページに最適です。
技術的なこだわり
ShadowCastの開発は、フォントエンジニアリングとアルゴリズム設計の世界です。技術的な背景を少し紹介します。
開発で最も苦労したのは、「影側」の定義と判定ロジックです。文字の輪郭は曲線(ベジェ曲線)で構成されており、各セグメントの法線方向と光源方向の内積を計算して、影になるか光が当たるかを判定します。この処理を44,776文字 × 8方向、合計358,000以上のグリフに適用しています。
もう一つのこだわりは、可読性の維持です。影側の輪郭だけにすると、文字が崩れて読めなくなるケースがあります。特に画数の少ないひらがなや記号では、線が少なすぎて何の文字かわからなくなることも。そこを調整しながら、「影だけなのにちゃんと読める」絶妙なバランスを追求しました。
ライセンスと配布形式
ShadowCastはSIL Open Font License (OFL)で公開しています。これは世界中のオープンソースフォントで広く採用されているライセンスです。
無料で使える
個人利用・商用利用を問わず、完全無料で使えます。デザイン制作、動画制作、Webサイト、印刷物 — あらゆる用途に対応します。
改変・再配布OK
フォントファイルの改変や再配布も、SIL OFLの条件に従えば自由です。自分のプロジェクトに組み込んで再配布することもできます。
TTF + WOFF2の2形式
TTF: Mac / Windows / Linux / iOS / Android で利用可能。WOFF2: Webフォントとして最適。どちらも公式サイトから無料ダウンロードできます。
SIL Open Font License とは?
Google Fonts や Adobe Fonts にも採用されている、フォント向けのオープンソースライセンスです。商用利用OK、改変OK、再配布OK。ただし、フォント単体での販売は禁止されています。詳しくは 公式サイト をご確認ください。
まとめ
ShadowCastは、影の輪郭だけで文字を描く、新しいコンセプトのフォントです。改めてポイントをまとめます。
- 影だけで文字を描く — 光源の反対側、影になる輪郭だけで文字を表現する唯一無二のフォント
- 8方向の光源に対応 — TopLeft, Top, TopRight, Left, Right, BottomLeft, Bottom, BottomRight
- 44,776文字収録 — CJK漢字、ひらがな、カタカナ、ラテン文字など実用的な文字数をカバー
- TTF + WOFF2 — デスクトップでもWebでも使える2つの形式で配布
- 全プラットフォーム対応 — Mac, Windows, Linux, iOS (AnyFont), Android (zFont 3)
- SIL OFLで無料配布 — 商用利用OK、改変OK、再配布OK
「影だけで文字を描く」というシンプルなコンセプトですが、実際に使ってみると、文字の見え方がこんなにも変わるのかと驚きます。光の方向を変えるたびに、同じ文字が別の表情を見せる。それはまるで、文字の中に光と影の物語があるようです。
デザイン作品のアクセントに、アート作品の素材に、ポスターやサムネイルの演出に — ShadowCastがみなさんのクリエイティブに新しい可能性をもたらすことを願っています。ぜひ一度、Webデモで体験してみてください。

